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縁廻る企画

出会ったひと、お話ししたこと、感じたこと、その記録。

第2回 紅茶がのみたくなる

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2016/07/25

 

渋谷にて、しらすさんとお会いしてきました。

しらすさんは、学生・20代・女性。

アーティスティックでユニークなお話をたくさん聞くことができました。

 

【もくじ】

 

▼動いているものにときめく

 

かいじゅう(以下、か):まずは簡単に自己紹介をお願いします」

 

しらす(以下、し)「しらすです。美術系の大学に通っています」

 

か:美大!専攻はなんですか?

 

し「映像をつくることが多いですかね」

 

か:映像の魅力は、どんなところですか?

 

し「一度写真の授業があったんですけど、自分は写真に向いていないと思うんです。全然ハマらなくて。一瞬を切り取る、っていうのが難しいし、動いているものの方がときめくんですよ」

 

か:動いているものの方がときめく!いいですね。笑 私は、逆に写真は好きなんですが、映像は苦手です。良し悪しがいまいちわからないんですよね。

 

し「映像は、”感触”がつたわれば勝ち、ですね。かたい、とか、つめたい、とか、やわらかい、とか…そういう”感触”がわかる映像は評価が高いです。たとえば、ここにゴマアザラシがいるとするじゃないですか」

 

か:(ゴマアザラシ!)笑

 

し「やわらかそう、ってつたわればこっちの勝ちです」

 

か:なるほど。笑

 

 

美大と就活

 

し「リクルートスーツがいやなんです。なんか、みんな同じ感じになっちゃうじゃないですか。選ぶ方も大変だろうなあって思います」

 

か:それ、すごくわかります。 

 

し「入学式の時、教授に『桜の下で花見をするような人間にはなるな』って言われたんですよね。『人と同じことをしてちゃダメだ。僕たちはドクダミで花見をしなきゃダメなんだ』って」

 

か:さすが美大ですね。しらすさんは、やっぱり美術系の就職をめざしているんですか?

 

し「はじめは映像制作系がいいなって思っていたんですけど、映像は体育会系のところが多いんですよね。空気があんまり合わない気がして。今は手を動かす職よりも、頭を動かす職をさがしています」

 

か:美大に進学するひとはみんなアーティストになりそうなイメージがありますけど、案外、そうじゃないんですよね。どんなに才能があっても、つくることが好きでも、さまざまな理由で「アーティスト」を諦めなければならないときがある。世の中には、じつは素晴らしい才能がたくさん、たくさん埋もれているんじゃないかな、と思うことがよくあります。

 

か:芸術ってむずかしいですね。

 

し「美大生のなかにも、いざ美大に来てみたら、ぜんぜん絵がうまく描けない、やっぱり苦手だったのかもって人もいますよ」

 

か:そんなことあるんですか!?美大にまで行く人は、みんな絵が大好きで、得意なものだとばかり…!

 

し「それがね〜、あるんですよ。笑」

 

 

▼文章には、しみこんだものが、にじみ出る

 

し「かいじゅうさんの文章は、なんというか等身大で、いいなって思います。嘘をつけない方なのかな、と感じました」

 

か:ありがとうございます。そうなんですよね。笑

 

し「でも、素直に書けるっていうのは武器になりますよね。高校のとき、おじさんを主人公にした小説を書いてみたことがあるんですけど、あんまりうまくいきませんでした」

 

か:想像だけで書くのは難しいですよね。ある意味、それはウソな訳ですから。

 

し「美大生の書く文章は、視覚に訴えてくるような、まどろっこしいのが多いですね。笑 逆に、音楽をやっている方の文章は耳ざわりが良いのですぐわかります」

 

か:あ、なんか、その感覚わかります。文章って、どんなに隠しても、自分に深くしみついたもの――性格とか、考えとか、雰囲気とか、そういうものが出ちゃいますよね。

 

し「以前、頭の中で映像を浮かべて書いた小説は、映像が生まれる以前の、テレビやビデオの無い時代に書かれた作品を超えられない、という言葉に衝撃を受けました。たしかによく考えると、小説のなかにも、自然とカメラロールが意識されているんですよね」

 

か:言われてみれば、そうですね。そういう映像的な感覚は、普段何気なく見ているドラマやアニメや映画、それにCMなんかから、私たちのなかに自然としみついているものなんでしょうね。

 

 

江國香織を読むと、紅茶がのみたくなる

 

し「私、江國香織さんが好きなんですけど、読み終わった後に紅茶をのみたくなるんですよね。今でも覚えているんですけど、初めて江國さんの小説を読んだのは、家に帰る電車に乗っているときで…あ、紅茶のみたいな、って思って、地元のカルディで紅茶を買ったんですよ。笑」

 

か:紅茶がのみたくなる…ふしぎな感覚ですね。

 

し「かいじゅうさんの文章を読んだときも、紅茶がのみたくなります。かいじゅうさんて、ちょっと江國さんに似ていますよね。もしかしたら凛とした女性=紅茶、というイメージがあるのかもしれません」

 

か:江國香織さんに似ている、とは初めて言われました。なんだかうれしいです。(照)

 

 

▼細くて、折れそうなものが好き

 

し「江國さんは、憧れの女性像に近いんです。女性作家の方が好きだし、私はやっぱり女なので、そっちの方に感性が反応するんですよね。逆に、女性作家ばかり摂取していたら、女性的なものに反応する感性しか発達しなかったので、そういう点では男性が羨ましいです」

 

 か:自分が女であることを、嫌だと思ったことはありませんか?

 

し「うーん、昔は反骨精神?で、嫌だなあと思っていたこともあるけれど、今はあんまりないですね。反骨している方が疲れちゃって。笑」

 

か:笑。では、自分のここは女性らしい、と思うところはありますか?

 

し「折れそうなものが好きなところ。か細くて、折れてしまいそうなモチーフが好きなんです。高校生と、フュギアスケートと、鹿の角と、魚の骨と、あと、ピンヒール…これは、私の中ではぜんぶ同列なんです。細くて、折れそうな。華奢なもの。作品でも、そういうモチーフに惹かれます」

 

か:面白いですね。母性本能なんでしょうか。笑

 

し「うーん、でも、そういうものが好きなのって、女性だからというよりは、日本人だからなのかな? あっ、それに、よく考えたら、男性も華奢な女性が好きですよね…? そしたら、むしろ男性的…?笑」

 

か:確かに。笑

 

 

▼ポジティブな恋人

 

か:彼氏さんは、どういうひとなんですか?

 

し「同じ大学の先輩です。でも、あんまり美大生っぽくはないかな。合コンの幹事とかやりそうな。私とは正反対なんです」

 

か:正反対のひととお付き合いすることになった経緯が気になりますね。笑

 

し「はじめて告白されたときは振っちゃったんですけど、あんまり何度も言ってくるから、考えてやるかなって思ったんです。笑 私は、相手に『好き』って言われても、なんだかよくわからなくて。でも、それって自分の思う『好き』の基準だけで計っていたんだな、と今では思います。」

 

か:なるほど。深いですね。

 

し「それに、私だったら、1回振られたらあきらめちゃうな、と思って。何度も言えるってすごいですよね。でも、『まあ俺は運命変えられるって信じてたんだよね〜』とか言われるのはめんどくさいですね。笑」

 

か:彼氏さん、けっこう自信家なんですね。笑

 

し「一度、思いっきり不満をぶつけたことがあるんですけど、彼は落ち込んだりしなくて、『いや〜びっくりしたよ〜!そこまで言ってくれるのは君だけだよ〜!』って言うんですよ。それで、こっちも力が抜けちゃって。笑 あと、しばらく放っておいたこともあるんですけど、久しぶりに会ったら『もう〜びわちゃんがいないとつまんなかったよ〜』って言ってくれて。それは可愛かったですね。笑」

 

か:すてき!そういうポジティブなひと、いいですね。 笑

 

し「私はネガティブなんですけど、はじめて根が明るい人間といっしょにいますね。私が『友達が少ない気がする』ってしょんぼりしていたとき、彼は『そもそも友達って言葉で定義するものじゃなくない?』って言ってくれたんです。『あ、そっか、考えなければいいんだ』って思いました」

 

か:自分と考え方の違うひとは、思わぬヒントをくれますよね。でも、そういう彼の言葉をすんなり受け入れられる蒼井さんは、とても素直でえらいと思います。本当のネガティブは、「でも…」「だって…」って言いますからね。

 

し「頑固なネガティブはよくないですね!」 

 

 

▼しなやかな女性(総括に代えて)

 

実際、しらすさんは、素直な方だなという印象を受けました。たぶん、見たものや読んだもの、感じたことを、スポンジみたいに吸収できる(そういう感受性は芸術家にとって重要なものだと思います)。そして、折れないけれど、硬くもない、とてもしなやかな女性だなと思いました。ゆらゆらゆれる、長いピアスがすてきでした。 貝殻の先には真珠がついていました。