縁廻る企画

出会ったひと、お話ししたこと、感じたこと、その記録。

第7回 ネガティヴを見つめる 1/2

2016/08/20

 

薄井さんとお会いしてきました。

薄井さんは、看護師・20代・女性。しらすさんのご紹介でこの企画に参加してくれました。

さて、この企画も第7回ということで……ここで(突然ですが)今までの経過を整理してみたいと思います。

 

こんな感じです。ご覧のとおり、本来は「友達の友達の友達……」と辿っていく企画だったのですが、「友達の友達」より「友達」が増え続けています(笑)まあ、これはこれでおもしろいので、ヨシとしましょう!

 

では、第7回いきます。

今回の記事はすこし長いので、ふたつに分けてみました。

 

【もくじ】

前半

・看護師というお仕事(1/2)

後半

・理系の文章が好き(2/2)

・意味がわからない文章を書きたい(2/2)

・目を逸らさない強さ(総括に代えて)(2/2)

 

▼看護師というお仕事

かいじゅう(以下、か):まずは簡単に自己紹介をお願いします。

薄井(以下、薄)「薄井です」

か:薄井っていうのは、PNなんですよね?

薄「はい。本当は、"背骨ぐちゅぐちゅ薄井"だったんですけど……」

か:な、なぜ?!

薄「語呂が良かったからですかね……響き?」

か:響き。

薄「職業は看護師です」

か:看護師さんって、具体的にはどういうことをするんですか?

薄「えーと、先生の指示に従って、点滴とか内服とか。治療関係ですね。私たちの業界では、よく"安楽"っていう言葉を使うんですけど。患者さんが"安楽"に過ごせるように、そのお手伝いをしています。寝たきりの人が多いので、お風呂とか、お身体を拭いたり、おしもを洗ったり……ということもします」

か:大変そうです。

薄「やってる側は、大変って感じしないですよ」

か:そうなんですか? 薄井さんは、なぜ看護師さんに?

薄「元々、向いてるって家族とかにも言われていて。高校のときは生物の授業が好きだったし、人の身体の仕組みとか、覚えるのが好きで。そういう関係の仕事に就きたいって思ったんです。それに、看護師って慢性的な人員不足なので、辞めてもまたすぐ就職できるんですよ。手に職をつけられるというか、資格があるところもいいなって。自宅でする仕事にも憧れていたので、小説家とかもいいな、と思うんですけど……」

か:小説家にはならないんですか?

薄「たとえば、ファンタジー小説は世界観を作らなきゃいけないですよね。そういうのが苦手なんです。私は短編しか書けないし、小説に対する熱意が持続的じゃない。書けるときに書きたいんです。小説家になりたいって気持ちもちょっとは、ありますけど、新しいのを出せって言われて出せる自信がない。今はネットでアマチュアでも活躍できるし、アピールする場所が増えているので、そういうやり方のほうがいいかなって。最果タヒさんみたいな、ネットで作品を出してっていうのもひとつのやり方だと思います」

か:わかります。わたしも自分のペースで気ままにやるのがいいな、と思って、ネットでこんなことをしています。笑

か:お仕事は楽しいですか?

薄「そうですね。扱っている内容が面白いです。神経内科というところなんですけど。たとえば、心臓とかお腹なら、ここが痛んでるからこの症状が出ているんだ、ってわかりますよね。でも、脳はそうじゃないんです。一筋縄ではなくて、脳のあるところが傷ついているのに、全然違うところが痛んでいたりします。開けて見ることもできないから、そこも面白いんですよね」

か:へえ……!ということは、あえて神経内科を選んだのですね。そこに興味があって。

薄「もともと精神科に興味があったので、ジャンルが近いから、興味を持ったのかもしれないです。鬱病も脳味噌の病気って言われたりしますからね」

か:鬱病にも興味が?

薄「中学の時、好きな小説家がいて、そのひとのサイトをよく見ていたんですが、そのひとは統合失調症で。すごくつらそうなんだけれど、すごくいい小説を書くんです。つらそうだからこそ、いい小説を書けるんでしょうね。そういう風につらそうな人の手伝いをしたいと思ったのがきっかけで興味を持ちました。才能があるのに活かせないのはもったいないですから」

か:そうですね。才能のあるひとほど、病んでしまったりしますよね。

か:神経内科には、どのような患者さんがいらっしゃるのですか?

薄「ご高齢の方が多いですね」

か:みなさん、何かご病気があって、それを治すために入院しているのでしょうか? それとも、入院しないと生活できない……という状況なのですか?

薄「ええと、長く生きていると、なにかしら痛いところが出てきますよね。ご高齢の方は、だいたい何かしら、ベースとなる疾患を抱えています。たとえば慢性の脳梗塞で体が麻痺している、とか。そういうのは治らない疾患ですね。でもそれって、他人の手助けは必要だけど、状態としては安定している、と言えるんです。だからそれだけでは入院しなくていいんです。でも、その状態が急変した時、つまり、もともと寝たきりだけど肺炎になっちゃったとか、脱水になっちゃったとか、なにかプラスで急変した事態が起きると、入院になるんですね」

か:なるほど。やはり入院というのは"異常事態"なんですね。

か:ところで、ご高齢の方が多いということは、人の生死をたくさん見るわけですよね。それもそれで心理的な負担が大きそうというか、……やっぱり悲しいですよね。

薄「そうですね。歳をとるとどうしても、周りに迷惑かけちゃったり、家族に見放されたり……そこまでして生きたいかな?とか、なんでこの人を生かしてるんだろう、って思う時もあります。この人、生きてる意味あるのかな?って。でも、ご家族からしたらもちろん、生きてる意味があるんですよね。そういうの見てると、30代で死にたいって思いますね(笑)死なないけど。でもだんだん、そういう感慨も薄れてきてる感じがします」

か:「ナースのお仕事」にそういう話がありましたね。
ナースのお仕事 - Wikipedia

薄「もちろん、病院で亡くなる人もいて。私はまだ立ち会ったことはないですけど、ある日病室がからっぽになっていて。あー死んじゃったんだなーって思ったんですけど、それだけだったんです。でも、本当はそれだけじゃなくない?って思ったりとか」

か:慣れてきてしまうんですね。でも、慣れないとやってられないお仕事でもありますよね……。

薄「癌の人も、結構いるんですよ。癌って、症状の変化が激しいんです。副作用も大きいし、あっという間に病状が進行してしまったりもする。ある患者さんがいて。だいたいの日常生活はふつうにできるけれど、食べることだけできない、って方だったんです。飲み込むのが痛くて。そのひとが抗がん剤の副作用でどんどん食べられなくなってしまって、この前仕事に行った時には、とうとう鼻から栄養をいれられていたんです。それがすごく衝撃的だったなあ。その人の気持ちを思うと、歩いたりできるのに、鼻から栄養って、すごく情けなく感じるだろうなって……。直視できなかったな。あ、もう、とうとうここまで来ちゃったのかって。癌は、看護師側としても、感じるものは多いですね」

 

☟後半に続きます!

 

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